慰めの焼肉屋
今回のお題、いくつか思い浮かびました。
その中でも一番最初に思い浮かんだのが、母に連れられて行った焼肉屋でした。
その頃私は、一度目の大学受験に失敗してしばらく家に篭ってました。
それまでは学校なり家なり、どこかしらで机に向かって勉強していた毎日。
そんな窮屈な生活から解放された暁には、大手を振ってどこか出かけてやろうと思ってました。
それが蓋を開ければ受験した大学はすべて不合格。
外で知人と会ったりして、その事実を聞かれるなり、答えるなりすることが苦痛で結局家にいることが多かったように思います。
そんなとき、仕事中の母親から「今から迎えに行くから支度しなさい」との電話が。
どこに向かうのか知らされずに助手席に乗り込み、辿り着いたは一軒の小さな焼肉屋でした。
母がたまにランチを食べに来るというその焼肉屋は、値段から言えばそんなにいい肉を扱っているわけではなかったんだと思います。
それでも塞ぎ込んでいた私を、忙しい仕事の合間を縫って母が連れてきてくれたというだけで、私の心を何倍も何十倍もの価値で満たしてくれるランチでした。
そういえば、母と二人で外食するのって大半私が体調崩して病院に連れて行かれてるときだよな…なんて考えられるようになったのはもっと後のことでしたが、思えばこのときの私は心が病みかけてたのかもしれません。
そう考えると、あの焼肉屋こそ私を立ち直らせてくれた思い出の場所なんじゃないかな。
もうあれから十年以上経ちますし店の名前すら思い出せませんが、帰省の折にはいつかまた立ち寄ってみたいなって思います。
